TOP

読み聞かせについて

絵本を探す ブログ

絵本の読み聞かせ よみっこ

  へっこき嫁ご (朗読用)

「オリジナル童話」に戻る▲


 「へっこき嫁ご」を朗読でやってみようと思い、語り用の文章に手を加えたものです。
 語り用の短縮版になりますが、内容は、ほとんど変わっていません。

 語り用は、語り口をそのまま文字にしたものなので、第三者が文章として読むと、かなり分かりづらいものがありました。
 しかし朗読用は、私の語りを聞いたことがない人でも、分かりやすいと思います。

 よかったら、そのまま朗読用の文章として、または語りの台本としてお使いください。

……………………………………………………………………………
*長さは、朗読のスピードによりますが、15分くらいになります。

*読み方によっては、男と女の愛の物語になります!

*話の中に出てくる「カキ」は、季節によって「ナシ」や「リンゴ」に代えて読むことをお勧めします。

……………………………………………………………………………

 もちろん、以下の「へっこき嫁ご」は、オリジナルの童話ではありません。
 もとからあった昔話を脚色したものです。
 アップする場所を、このコーナーにしただけだということをご了承ください。

 

       へっこき嫁ご (朗読用) <chaury版>

 とんとんむかし。

 ある山の奥の小さな村に、年頃になったセガレのいる家があった。
 このセガレが、毎日、嫁ごがほしい、嫁ごがほしいと叫んでいた。

 だが、この村には、年頃の若い娘が一人もいなかったんじゃ。
 それに一番山奥の貧しい村だったものだから、嫁に来るという娘は、なかなかいない。

 それでも みつかる時は、見つかるもんじゃ。
 その娘は、峠を五つも六つも越えた、遠い村からやって来た。

 この娘が、いい嫁ごじゃった。
 器量はいいし、気立てはいいし、体も丈夫だときている。
 そんなもんだから、おっとーも、おっかーも、
 「うちゃー、三国一の嫁ごが来てくれた」と言って、大喜びをした。

 もちろん一番喜んだのは、セガレじゃった。
 こんなに仲がよくて、アツアツの夫婦は、他じゃ見たことがない。

 ところが、日が経つにしたがって、嫁ごの顔色が、少しずつ悪くなってきた。
 しまいには、すっかり元気が、なくなってしまった。

 そこで、「女どうしの方がよかんべぇ」ということで、おっかーが、嫁ごに聞いてみることにしたんじゃ。
 「おめぇー、最近顔色がよくねぇようだけどよ、どっか体にわりーところでも、あるんじゃねーか?」

 すると、嫁ごが言った。
 「オラー、わりーとこは、ねぇだよ。体は、丈夫だ。
 でもオラー……、嫁にくる前に、家の、おっかさんに言われただよ。
 オメー、嫁に行ったら……へぇー、こくでねぇ。
 へぇー、こいたら、家に置いてもらえなくなるからなって。
 そんで、オラー、いっしょうけんめいがまんして、へぇーを、こかねぇーようにしているだよ」

 それを聞いた、おっかーは、
 「なーんだ。そんなこったら、へぇなんか、がまんするこたぁねぇ。
 へぇ、こきたくなったら、遠慮しねぇでいいから、ブーカ、ブーカ、気の済むまでこきゃいい」
 こう言ってやった。

 そうしたら、嫁ごは、ホッとした顔をしてな、
 「そいつぁー、ありがてー。そいじゃ、こかしてもらうべー」
 礼儀正しく そう言うと、嫁ごは さっそく、へをこき始めたんじゃ。

 プー、プー、プー、プー。プー、プー、プー、プー。
 プー、プー、プー、プー。プー、プー、プー、プー。
 次から次へとへをこいて、へが、止まんなくなってしまった。
 今までがまんしていたへが、いっきに出てきたんじゃな。

 ブー、ブー、ブー、ブー。ブー、ブー、ブー、ブー。
 どんどんとへがでかくなってきて、とうとう家の中に、嵐が来たのかと思うくらいの大風が吹き始めた。

 バー、バー、バー、バー。バー、バー、バー、バー。
 への勢いというのは、とんでもない!
 お茶を飲んでた、湯飲みや急須が吹っ飛んで、蒲団や枕が舞い上がった。
 しまいに、目の前で話していた、おっかーまで、天井に吹き上げてしまった。

 おっかーは、驚いた。
 いくら、「へぇー、こいていい」って言っても、まさか、これほどすごい、へぇだとは思ってねぇーもんだから、おっかーは、あわてて叫んだ。
 「へぇー、止めてくれー。へーぇ、止めてくれー」

 天井にへばりついて叫んでいるおっかーを見て、嫁ごも、あわてて、へを止めた。
 そしたらな、急に、へを止めようとしたもんだから、今度は、へが、尻の穴に逆戻りし始めた。

 ス〜ッ、スッ、スッ、スッ。スッ、スッ、スッ、スッ。
 いろんなものが、嫁ごの尻に、吸い寄せられていく。
 しまいに、おっかーの髪の毛まで、引っ張りこんでしまった。
 それで、とうとう、おっかーの髪の毛は、みんなとれてしまった。

 おっかーの頭は、ツルツルじゃ。
 けれども おっかーは、嫁ごを責めることはしなかった。
 その上、「家や村のみんなに、余計な心配をかけることはねぇ」ということでな、このことは、誰にも言わないでおくことにしたんじゃ。

 それでな、「なんだか見栄えが悪くなっちまったなー」と言って、家の中にいる時でもなんでも、頭に手ぬぐいを、かぶっていることにしたんじゃ。

 でもこんなことは、いつまでも隠せるものじゃない。
 ある時、セガレと話をしていると、手ぬぐいが、頭からツルッと、すべり落ちてしまった。

 「おっかー、どうしただ。その頭は」
 セガレは、驚いた。
 でも おっかーは、「どうしたってーこともねぇさ」などと言って、なにも話さなかった。

 けれども、そばにいた嫁ごが、
 「じつはー、おっかーの髪の毛は……オラが、へをこいて、これこれこういう訳で、全部とれちまったただよ」
 みんな話してしまった。

 そしたらセガレは、信じられないというような顔をして怒り出した。
 「へぇー? へぇー、こくたって、ほどがあらぁ。なにも髪の毛がみんなとれちまうほど、へぇー、こかなくたって、よっかっぺーに」

 すると、おっかーは、
 「いいから、いいから、怒るこたぁねぇ。
 この年になったら髪の毛なんざ、あろうがなかろうが、どおってことはねぇーんだから」
 そう言って、なだめたけれども、セガレは、おさまらなかった。

 「いやー! そんなにすげー へぇじゃよ、危なくてしかたがねぇじゃねぇか。
 毎日、目の前に鉄砲をつきつけられているようなもんだ。
 オラ達だけの問題じゃねぇぞ。村のみんなにだって迷惑をかけるかもしんねぇ。
 オラー、オラー、オラー、決めた。……嫁ごと別れる!」
 一瞬の間に一大決心をしてしまったセガレは、嫁ごに言った。

 「ああ〜、しかたがねぇ。……オラが、へをこいたのが悪かったんだ〜」
 嫁後は そう言うと、身の回りのしたくを始めたんじゃ。
 「送ってってやっから……」
 それから セガレは、したくの出来た嫁ごと一緒に、家を出たんじゃ。



 嫁ごの村は、峠を五つも六つも越えて行くから、とにかく遠い。

 ゆっくりと二人で歩いていったんだがな、二人とも、ひとっことも話しをしないんじゃ。
 それでも、歩いていれば前には進む。
 それでな、道のりの半分くらいの所にある、峠の茶屋に着いたんじゃ。

 その茶屋には、米屋と反物屋と小間物屋が、ゆっくりと休んでいた。
 茶屋の横には、大きなカキの木があってな。カキの実の あまいにおいが、ぷんぷんと あたりにただよっていた。

 そのカキの木を見ていた米屋が、茶屋のおやじに声をかけた。
 「おやじよ。あの木には、うまそうなカキが、いっぺーなってるけどよ。あんなに、たけー所にしかなってねぇーじゃねぇか。
 あれじゃ、カキをとろうったって、なかなかとれねぇんじゃねぇか」

 そしたら、おやじは言った。
 「いやいや、その通りなんで。そんだから、しゃーねぇ。
 カキが落ちてくるのを待って、落ちてきたら、拾っちゃあ食うだよ」

 それを 嫁ごが聞いていたんじゃ。それで、思わずつぶやいた。
 「な〜んだ、あんなカキだったら、オラが、へをこきゃ、みんな落っちまうだよ」

 それを米屋が、聞いていたんじゃ。
 「なにー? へをこいただけで、あのカキをみんな落とせんのか?
 そんなことができるんなら、見てみてぇもんだ。
 ほんとに見ることができたらよ、オラが連れてきた馬と、馬がしょっている米を、ぜんぶくれてやってもいい」

 それを聞いていた反物屋も、
 「なんだー。へぇーで、あのカキを、ぜんぶ落とせんのか?
 そいつぁ、すげー。
 オラも、むこうの村で、売るべぇと思ってしょってきた反物がいっぺーあっからよ、ほんとに見ることができたら、これを全部くれてやるべぇ」

 そうしたら、小間物屋も、
 「そんなことだったら、オラだって見てみてぇ。
 オラだって、売るべぇと思ってしょってきた小間物が、いっぺーあっからよ。見ることができるんだったら、これを全部くれてやるべぇ」

 こんなこと言いながら、三人とも盛り上がってしまった。
 そしてとうとう「見てみてぇー、見てみてぇー」と、三人が口をそろえて叫び始めた。

 (いやー、えれぇーことになっちまったな〜)
 嫁ごは、困ってしまった。
 けれども、周りがこうなってしまったのだから、しかたがない。
 「それじゃ、やらせてもらいます」
 礼儀正しく、こう言うと、嫁ごは、カキの木の下にススーっと歩いていった。
 それで、おっかねぇー顔をしたと思うと、「ふん!」とふんばった。

 ボォー、ボォー、ボォー。ボォー、ボォー、ボォー。
 ボォー、ボォー、ボォー。ボォー、ボォー、ボォー。
 ものすごい、へをこき始めた。

 カキの木が、ザワザワザワーっと、ゆらいだかと思うと、カキの実が、
 パタパタ、パタパタ、パタパタ、パタパタ。
 パタパタ、パタパタ、パタパタ、パタパタ。
 あっという間に、みんな落ちてしまった。

 米屋も反物屋も小間物屋も、びっくりしながら、それを見ていた。
 三人とも、目の前で見ていたのだから、しかたがない。
 まさか「くれてやるべぇ」と言ったものを「よした」とは言えない。
 嫁ごは、約束どおりに、馬も米も反物も小間物も、みんな、もらうことになったんじゃ。

 これを、ずっと見ていたセガレは考えた。
 (オラー、へぇのことで、大好きな嫁ごと別れるベーと思ったけどよ。へぇが、こんなに役に立つこともあるんなら、あのおっかねぇ へぇも使いようなのかもしんねぇな)

 そう思ったセガレは、嫁ごに言った。
 「なー、オラといっしょに、また、村へ帰るべ」
 嫁ごは、きょとんとしている。
 まさかとは思いながらも、米や反物が目当てじゃないかということが、頭をかずめた。

 そうしたら、セガレが、また言った。
 「おっかーも、『いいから、いいから』って言ってることだしよ。また、オラといっしょに、村へ帰るべ」
 それでも嫁ごは、おっかーの気持ちじゃなくて、セガレの本当の気持ちが知りたいと思い、じーっと顔を見つめていた。

 そうしたら、セガレが、もう一度言った。
 「オラが、オメーといっしょに帰りてぇーだ。
 オラが、オメーといっしょに、また暮らしてぇーだよ」

 嫁ごの顔が、ほころんだ。
 「そんじゃ、そうすっか」

 こうして、セガレと嫁ごは、もらったばかりの反物と小間物を、それぞれがしょって、米をのっけた馬を引いて、二人で仲良く並んでな、たくさんの話しをしながら、山の奥の小さな村に帰っていったんじゃ。

 それでな、みんなが幸せに暮らしと言うことじゃ。

 めでたしこっぷり。

 「へっこき嫁ご」の話は、これにておしまい。

 

-  
  「オリジナル童話」に戻る▲

このページの先頭に戻る▲

TOP


Copyright © 2009 [chaury] All rights reserved.